仕事でもプライベートでも、「やるべきこと」は日々容赦なく増え続けます。それらをしっかり整理し、スムーズに前へ進めるためには、「見極める」というプロセスが欠かせません。しかし、いざタスクに取りかかろうとしてもうまく動けないときもあります。そんなときには「どう見極めるか」を再確認することが大切です。本記事では、タスクがうまく進まない原因や、その状況を打開するためのポイントをまとめていきます。
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## 1.なぜタスクが進まないのか?──原因
多くの場合、「タスクそのもの」に手をつけられない主な原因は、“何をどうすればよいかが曖昧”なままになっているからです。大量のメモやアイデアを受信箱や頭のなかに放り込んでいるだけで、「これは何か?」「行動が必要なのか?」といった問いをしっかり考えないままになっているのです。
- **ゴール(求めている結果)が曖昧**
- **具体的な次の行動(Next Action)が決まっていない**
- **本当にやるべきことかどうかの判断ができていない**
これらが“見極め”を怠った結果といえます。そして、その曖昧さが重なるほど、タスクは「やるべきだと思いつつ後回し」にされ、膨れ上がっていくのです。
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## 2.「見極める」とは何か?
「見極める」とは、一つひとつの「気になること」に対して、
1. これは一体何を意味するのか?
2. 自分はこれについて行動を起こす必要があるのか?
3. 行動が必要であれば、具体的にどんなアクションをとればいいのか?
をはっきりさせることです。
### 2-1.これは何か?――「気になること」の正体を掘り下げる
受信箱(インボックス)やメール、会議メモ、思いついたアイデアなど、日々発生するあらゆる情報をまず「これは何か?」と問いかけましょう。役所の書類や会社からの通知など、「よくわからない」「難しそう」と感じるものをそのまま放置してしまうと、後で必ず手痛いしっぺ返しに遭います。
- 「これは何を意味していて、どのような行動に直結するのか?」
- 「誰かに何かを依頼されているのか、それともただの案内なのか?」
こうした質問に答える習慣を身につけるだけでも、次のステップが大幅に楽になります。
### 2-2.行動を起こす必要があるか?
次に、「自分が行動を起こす必要があるのか?」を問います。答えは「イエス」か「ノー」しかありません。
#### (1) 行動が不要な場合
行動が不要なものは、大きく以下の三つに分けて扱います。
1. **ゴミ(もう価値がないもの)**
- 「もう読まないパンフレットやDM」「過去のイベント案内」など
2. **いつかやる/多分やる(今は行動しないが、将来的に可能性があるもの)**
- 「興味があるセミナーのチラシ」「しばらく先で必要になるかもしれない案」など
3. **資料(後で参照するかもしれない情報)**
- 「プロジェクトの参考資料」「いざという時に見返す書類」など
これらをいち早く分類できるシステム(ファイリングやデジタルでの管理ルール)が必要です。不要なものは捨て、保留したいものは保留用の仕組みへ、資料としてとっておきたいものは適切な場所へファイルしていきます。
#### (2) 行動が必要な場合
行動が必要なものは、「望んでいる結果(ゴール)」と「次にとるべき具体的な行動(Next Action)」をはっきり定義することが重要です。
- **求めている結果**
GTD(Getting Things Done)では、この「結果」を「プロジェクト」と呼びます。1年以内に完結させたいものはすべて「プロジェクト」とみなし、リスト化して管理することが推奨されています。
- **次にとるべき行動(Next Action)**
「次に実際にやること」を、誰がどう見てもわかる物理的な行動にまで噛みくだいておく必要があります。たとえば、「会議をセッティングする」ではなく「●●さんに電話して日時を調整する」と、はっきり書くわけです。
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## 3.行動を起こす必要がない場合の処理
### 3-1.ゴミ
すでにゴミ箱行きと判断できるものは、躊躇なく処分します。保管するか迷う場合は、「迷ったら捨てる」「迷ったらとっておく」のどちらか、あらかじめ自分の方針を決めておくとスムーズです。
### 3-2.保留(今は行動しないが、将来動く可能性があるもの)
「いつかやる」「多分やる」といった行動保留アイテムは、そのまま頭の中に置いておくとストレスの元になるので、専用のリストやカレンダー、備忘録ファイルなどで一括管理します。「保留ボックス」や「いつかやるリスト」に移しておけば、後で見直すタイミングが来たときに思い出せる安心感を得られます。
### 3-3.資料
「あとで必要になるかもしれないな」と思った情報は、「資料」として定期的に見返せる形で保管します。紙であれデジタルであれ、手元に瞬時にアクセスできる状態をつくることが要です。メールソフトでもプロジェクト名やトピックごとのフォルダを作って仕分けておくと、必要な情報を必要なときに取り出しやすくなります。
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## 4.行動を起こす必要がある場合の処理
次は、「実際に何をやるか」が定まったものにどう対処するかです。GTDでは、行動を起こす必要があるタスクを以下の三つのパターンに分けて考えます。
1. **すぐに実行する(2分ルール)**
2. **誰かに任せる**
3. **あとでやる**
### 4-1.すぐに実行する(2分ルール)
2分以内で終わる作業は、その場で実行してしまう方が効率的です。返信メールや電話のメッセージ残しなど、短時間で済むアクションを一々リストに回していると、かえって手間がかかります。
「2分」というのはあくまで目安です。自分の状況に合わせて「1分」「5分」など柔軟に変えても構いません。大切なのは、「短時間で終わるならその場で片付ける」という意識を習慣化することです。
### 4-2.誰かに任せる
行動が必要でも、自分より適任者がいる場合は、適切に依頼します。メールやメモを送る、電話をするなどの手段があり、いずれにせよ「いつ誰に頼んだか」を記録しておくことが重要です。後ほど連絡待ちリストなどでフォローしないと、せっかく依頼した案件が宙に浮いてしまう恐れがあります。
### 4-3.あとでやる
自分がやらなければならない作業で、2分以上かかる場合は、リストやシステムに分類して保管し、適切なタイミングで取り組みます。
- **具体例**
- 顧客にメールを送る
- 配偶者と相談が必要な家庭の用事
- リサーチが必要なアイデア
これらは「プロジェクト」や「次にとるべき行動」としてリストに落とし込み、定期的に見直す仕組みを作っておくと漏れなく進められます。
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## 5.「プロジェクト」を把握する重要性
GTDにおける「プロジェクト」とは、「1年以内に完了させたい“結果”」のことをいいます。一つのゴールを達成するために必要な行動が複数あるなら、それはすべて「プロジェクト」です。例えば、「友人の誕生日パーティを開く」「部署全体の仕事の進め方を見直す」「新製品の導入」など、大小さまざまなものが該当します。
- **プロジェクトとして管理するメリット**
- 終わっていない仕事全体を俯瞰できる
- 「何がまだ完了していないか」が明確になる
- タスクや次の行動の抜け漏れを防ぐ
「プロジェクトリスト」に一度登録しておけば、ゴールを達成するまでそこから外れることはありません。逆に言えば、「次の行動」を1ステップずつ完了しても、ゴールそのものが終わっていない限りリストには残り続けます。この仕組みによって、すべてのタスクを見落としなく進められるのです。
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## 6.見極めを再度やるコツ
一度GTDを導入しても、日々の忙しさからシステムが乱れ始めることがあります。その場合は次の方法を試してみてください。
### 6-1.いったん“捨てる”覚悟をもつ
中途半端に溜まったメモやメールがあるなら、思い切って一度処分したり、古い書類を一掃してゼロスタートを切るのも一つの手です。その後で改めて「今、本当に気になること」をもう一度インボックスへ集め直します。頭の中や机の上をスッキリさせると、次に何をすべきかが見えやすくなります。
### 6-2.タスクの“ロット”を見直す
実は「完了できないと分かっている行動」をNext Actionとして書いてしまうと、いつまでも終わらずストレスだけが溜まります。たとえば大きな案件を1行だけで書くのではなく、それ自体を「プロジェクト化」して細分化する、または見出しにする、などの工夫が必要です。どのくらいの規模で分割すれば自分が着手しやすいか、定期的にレビューしながら見直してください。
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## まとめ
タスクがうまく進まないときは、「見極め」ができているかを改めて点検することが大切です。
1. **これは何か?**
─ 不明瞭なものは棚上げせず、まず内容を把握する。
2. **行動の必要はあるか?**
─ “イエス”なら次の行動を決め、“ノー”ならゴミ・保留・資料へ振り分ける。
3. **次にとるべき行動は具体的か?**
─ 「誰に何をどうするか」をしっかり物理的行動に落とし込む。
4. **2分で終わるならすぐ実行**し、それ以上かかるなら**誰かに任せる**か**あとでやる**に分類しておく。
5. **必要に応じて「プロジェクトリスト」**を用意し、ゴール達成まで追跡する。
このプロセスを日常に組み込み、定期的にレビューしていけば、どんなに複雑な仕事やプライベートのタスクでも、頭の中に溜め込む必要がなくなり、スッキリと前進させることができるようになるはずです。
もしタスクが滞ってしまったら、ぜひこの記事で紹介した“見極め”のステップをもう一度やり直してみてください。シンプルなプロセスですが、正しく運用するだけで想像以上の解放感を得られるでしょう。タスクも心も軽くなるので、ぜひ継続して実践してみてください。