# 日本におけるデジタルプロダクトデザイナーの人数と、IT企業内での比較 ## 1. はじめに 近年、ユーザー体験(UX)やインターフェースデザイン(UI)の重要性が高まり、デジタルプロダクトデザイナーの需要は急速に拡大しています。本記事では、日本国内におけるデジタルプロダクトデザイナーの人数をフェルミ推定(ざっくりとした推計)によって試算し、さらに同じIT企業内で働くエンジニアやビジネス職と比べた際の割合をまとめます。 --- ## 2. 日本のIT業界の規模感 ### 2-1. IT関連人材の総数 - 日本におけるIT関連従事者はおよそ**200万~300万人**ほどと推定されます。 - この中には、ソフトウェアエンジニア、インフラエンジニア、データサイエンティスト、ITコンサルタント、社内システム部門、セールスやサポートなど、さまざまな職種が含まれます。 ### 2-2. プロダクト開発に携わる人材 - 200万~300万人のIT関連人材のうち、「ユーザー向けのサービスやアプリを開発・運用する業務」に携わるのは、全体の半数弱~半数程度とみられます。 - つまり、**100万~150万人**程度が「プロダクト開発人材」に該当すると考えられます。 --- ## 3. デジタルプロダクトデザイナーの推定人数 ### 3-1. 定義と試算 「UI/UXデザイナー」や「サービスデザイナー」といった肩書きで、**アプリやWebサービスの画面設計、体験設計、情報設計などを主業務とする人**を、ここでは「デジタルプロダクトデザイナー」と呼ぶことにします。 #### 狭義のデジタルプロダクトデザイナー - ソフトウェアやWebサービスの制作会社、事業会社のプロダクト部門などで、フルタイムでUI/UXを手がけている人材。 - 日本全国では、**5万~15万人**程度と推定されています。 #### なぜ5万~15万人という幅があるのか? 1. **広義・狭義の定義差** - マーケティング担当やディレクターがデザイン業務を兼任するケースを含めるかどうか。 2. **制作会社・外注先の人材数** - 事業会社には少なくても、制作会社側に多数いる場合がある。 3. **Web/グラフィックからの転身** - 紙媒体のデザイナーがデジタルへ移行している例もあり、境界があいまい。 これらを総合して、狭義に絞ると最低ラインが5万人程度、広義に広げると15万人近く、あるいはそれ以上に膨らむ可能性があります。 ### 3-2. IT業界全体から見た割合 - IT関連人材全体(200万~300万人)の中で、5万~15万人のデザイナーが占める割合は、概算でおよそ**2~7%**になります。 - これは「ITに携わる人のうち、UI/UX専門のデザイナーはまだごく一部」にとどまることを示しています。 ### 3-3. プロダクト開発チーム内の割合 - プロダクト開発人材(100万~150万人)の中では、デザイナーの数(5万~15万人)は**約5~10%**に相当します。 - 実際のプロダクトチーム内では、エンジニアが大半を占め(5~7割程度)、ビジネス/PM職が2~3割、デザイナーが1割前後というイメージが多いようです。 --- ## 4. エンジニア・ビジネス職との比較表 以下の表は、あくまで目安としての人数レンジと、IT業界全体・プロダクト開発チームにおける概算シェアを示したものです。 | 区分 | 推定人数 | 割合・コメント | | :----------------------------------- | :------------- | :---------------------------- | | **日本のIT業界全体** | 200万~300万人 | 100%(母数) | | ┗ エンジニア(広義) | 100万~150万人 | IT全体の約50~60% | | ┗ ビジネス職(PM・マーケ等含む) | 40万~60万人 | IT全体の約20~30% | | ┗ デザイナー(UI/UX含む) | 5万~15万人 | IT全体の約2~7% | | ┗ その他(インフラ運用・コンサル等) | 残り | 幅広い職種をカバー | | | | | | **プロダクト開発に携わる人材** | 100万~150万人 | IT全体の約半数弱~半数 | | ┗ エンジニア(開発・QA等) | 50万~100万人 | プロダクト開発人材の約50~70% | | ┗ ビジネス職(PM・ディレクター等) | 20万~40万人 | プロダクト開発人材の約20~30% | | ┗ デザイナー(UI/UX) | 5万~15万人 | プロダクト開発人材の約5~10% | • **日本のIT業界全体**は約200万~300万人規模で、その中でエンジニア、ビジネス職、デザイナー、その他に大まかに分類。 • **プロダクト開発に携わる人材**は全体の約半数弱~半数(100万~150万人)で、その内訳としてエンジニアが50~70%、ビジネス職が20~30%、デザイナーが5~10%程度を占めるイメージです。 (上記の数値はあくまで推定値ですので、実際には更に細分化・幅をもって捉える必要があります) --- ## 5. まとめと展望 - 日本におけるデジタルプロダクトデザイナーは、**狭義の定義で5万~15万人程度**と推定され、IT全体から見ると**2~7%**、プロダクト開発領域においては**5~10%**程度を占めると考えられます。 - しかしながら、ユーザー体験が事業成果に直結するプロダクトが増える中で、今後はデジタルプロダクトデザイナーの需要がさらに高まることが予想されます。 - 一方で、デザイン領域の成熟度が上がるほど「リサーチ」「情報設計」「アートディレクション」「サービス戦略」など専門領域は細分化され、どこまでを「デジタルプロダクトデザイナー」と呼ぶのかは、ますます曖昧になっていくでしょう。 ### 今後の動向 - スタートアップや新規事業でのUI/UX重視に伴い、若手デザイナーの採用が増える一方、**経験7~10年以上のシニア人材はまだまだ不足**していると言われています。 - 海外市場に比べると日本は「デザイナー個々人がビジネス戦略やブランド開発まで踏み込むケース」が少ないと指摘されることもあり、これからのデジタルプロダクトデザイナーには**より包括的な視点**が求められると考えられます。 --- ## 6. おわりに 本記事では日本のデジタルプロダクトデザイナーの数や、IT企業内でのエンジニア・ビジネス職との比較を概観しました。実際には企業や組織の定義、兼任の有無、外注先の扱いによって数字は大きく変わるため、あくまで「桁感」を知るための参考値としてご利用ください。 今後も、ユーザー目線の製品づくりが求められる中で、デジタルプロダクトデザイナーが果たす役割はますます重要性を増していくでしょう。その需要拡大に伴い、人材市場の流動も活発化することが予想されます。「デザイン」が当たり前のようにプロダクトの中心に据えられる時代が、すでに本格的に到来していると言えるのではないでしょうか。