# **小柴貯油施設の歴史**
### **序論**
横浜市金沢区東部に位置する小柴貯油施設は 1、戦前から戦後にかけて、日本の燃料備蓄基地として重要な役割を担ってきた。戦前は旧日本海軍の施設として艦船燃料の貯蔵基地としての役割を担い 1、戦後は在日米軍の航空燃料貯蔵施設として利用され、2005年に日本に返還された。その後、横浜市によって公園として整備が進められている。本稿では、小柴貯油施設の歴史を紐解き、その建設の背景と目的、規模、運営主体の変遷、歴史的な出来事との関連性、現在の状況と今後の展望について考察する。
### **建設の背景と目的**
小柴貯油施設は、戦前に旧日本海軍によって艦船燃料の貯蔵基地として建設された 1。当時の日本は、海軍力の増強を図っており、それに伴い燃料の備蓄も重要な課題となっていた。小柴貯油施設は、その要請に応える形で建設されたと考えられる。
戦後、小柴貯油施設は在日米軍に接収され、航空機燃料の備蓄基地として利用された。朝鮮戦争やベトナム戦争など、東アジアにおける緊張が高まる中、米軍は航空機燃料の安定供給を確保するため、小柴貯油施設を重要な拠点として位置づけていた。
### **建設時期と規模**
小柴貯油施設は、第二次世界大戦前に旧日本海軍によって建設された 1。戦後、米軍に接収された後も、施設の拡張や改修が行われた。1973年には金沢地先埋立事業に伴い、長浜水路沿いに敷設されていたパイプライン(約1,200メートル) の移設・集約が行われ、1977年には地下貯油タンク1基が施設内に移設された。
小柴貯油施設は、広大な敷地に多数の貯油タンクを備えていた。陸上部の面積は526,205m²で、制限水域は約470,000m²であった。陸上部には地下タンク29基と地上タンク5基が設置されていた。地下タンクは、直径37~38m・高さ28~29mの大型タンク11基、直径18m・高さ20~21mの中型タンク14基、10×18×6.5mの小型タンク4基から構成されていた。
### **運営主体と変遷**
小柴貯油施設は、戦前は旧日本海軍、戦後は在日米軍によって運営されてきた。2005年に日本に返還された後は、横浜市が管理し、公園として整備を進めている。
### **役割と歴史的な出来事との関連性**
小柴貯油施設は、戦前・戦後を通じて、日本の安全保障に大きく貢献してきた。戦前は、海軍力の増強を支え、戦後は、東アジアにおける米軍の活動を支える重要な拠点となった。
1981年には、6号タンクが爆発し、火災が発生する事故が起こった。市消防局消防隊と米軍消防隊の共同活動により消火されたものの、この事故は、小柴貯油施設の危険性を改めて認識させる出来事となった。
### **現在の状況と今後の展望**
2005年に返還された小柴貯油施設は、現在、横浜市によって「小柴自然公園」として整備が進められている。公園の整備は3期に分けて行われ、第1期エリアは約12.5haが横浜市内初の「インクルーシブ遊具広場」として2023年9月に開園した。第3期の完成は2032年頃を予定している 2。
公園の整備にあたっては、土壌汚染対策や既存施設の活用などが課題となっている。南関東防衛局による土壌調査の結果、敷地の3.6%に土壌汚染対策法の基準値を超えるベンゼン・鉛・ヒ素の汚染が検出されており、対策が必要となっている。横浜市は、土壌汚染対策法に基づき、汚染土壌の入れ替えや封じ込めなどの対策を講じている 3。また、34基の貯油タンクのうち、一部は歴史的遺構として保全活用される予定だが 2、その他は埋め戻される予定である。この埋め戻しには、他所の建設発生土を搬入し、流動化処理土を用いて行われている 2。
公園整備計画には、市民参加や意見募集 5 を通じて策定された「小柴貯油施設跡地利用基本計画」 3 が反映されている。計画では、広域避難場所としての機能も想定し、災害時に活用可能な広場や、かまどベンチ、非常用トイレなどを整備する予定である 6。
小柴自然公園は、豊かな自然環境を活かした、市民の憩いの場となることが期待されている。具体的には、多目的レクリエーション広場、大型遊具広場、環境学習・体験広場、散策路、休憩施設、駐車場、里山農体験施設などが計画されている 7。加えて、生物多様性に配慮し、生物の生息・生育環境の保全・再生・創出にも取り組んでいる 1。
また、小柴貯油施設は、横浜市が推進する「緑の七大拠点」構想の「小柴・富岡」地区に位置付けられており 8、周辺の緑地と連携した広域的な緑のネットワーク形成を目指している。2009年には「開港150周年の森」づくりを行うため、横浜開港150周年記念植樹用地として、土地約1.5ヘクタールを国から管理受託し、植樹祭を開催した。この植樹祭では、タブノキ、スダジイ、アラカシ等の苗木を植えている。
公園の整備には、株式会社ランズ計画研究所が実施設計 9、復建調査設計が貯油タンク処理の施工方法検討 2 を担当するなど、専門的な知見を持つ企業が参画している。
### **公園のデザインと特徴**
小柴自然公園のデザインは、その歴史を反映したものとなっている。例えば、サインのデザインは、米軍基地を想起させるシンプルな躯体と明るいブルーでまとめられている 10。
### **結論**
小柴貯油施設は、戦前・戦後を通じて、日本の燃料備蓄基地として重要な役割を担ってきた。その歴史は、日本の安全保障と深く関わっており、様々な歴史的な出来事と関連している。旧日本海軍の燃料基地から米軍の貯油施設、そして現在は市民の憩いの場へと変遷を遂げた小柴貯油施設は、時代の変化を象徴する存在と言えるだろう。
現在、公園として整備が進められている小柴貯油施設跡地は、市民の憩いの場として、地域に貢献していくことが期待される。豊かな自然環境を活かした公園は、地域住民の交流の場となり、地域コミュニティの活性化にも繋がるだろう。また、環境への配慮や歴史的遺構の保全活用は、次世代に重要な遺産を継承していくことにも繋がる。
## **主要な出来事のタイムライン**
| 年 | 出来事 |
| :---- | :---- |
| 第二次世界大戦前 | 旧日本海軍により艦船燃料貯蔵基地として建設 |
| 1948年10月3日 | 米軍により接収、航空燃料貯蔵施設となる |
| 1973年3月22日 | 金沢地先埋立に伴うパイプライン移設集約等について日米合同委員会で合意 |
| 1977年2月24日 | 地下貯油タンク1基を施設内に移設することが日米合同委員会で合意 |
| 1981年10月13日 | 6号タンクが爆発し、火災が発生 |
| 2005年12月14日 | 陸地部分全域と制限水域の一部が返還 |
| 2009年 | 「開港150周年の森」植樹祭開催 |
| 2023年9月 | 第1期エリア(約12.5ha)が「インクルーシブ遊具広場」として開園 |
| 2032年頃 | 第3期エリア完成予定 |
## **検討課題**
小柴貯油施設跡地の公園化は、単なる跡地利用にとどまらず、様々な課題を提起している。
* **軍事施設の都市における役割の変化:** かつて軍事施設であった場所が、市民の憩いの場へと転換されることは、都市における軍事施設の役割の変化を象徴していると言える。
* **環境修復の課題:** 燃料貯蔵施設としての歴史を持つ小柴貯油施設跡地では、土壌汚染対策が重要な課題となっている。環境修復は、自然環境の保全だけでなく、周辺住民の安全確保という観点からも重要である。
* **都市計画における市民参加の重要性:** 小柴自然公園の整備計画は、市民参加や意見募集を通じて策定された。これは、都市計画における市民参加の重要性を示す好例と言えるだろう。
これらの課題は、小柴貯油施設跡地だけでなく、他の米軍施設跡地利用や、より広範な都市計画においても共通する課題である。小柴自然公園の整備は、これらの課題解決に向けた先進的な事例となることが期待される。
#### **引用文献**
1\. (仮称)小柴貯油施設跡地公園整備計画 事後調査結果報告書(工事中その2) \- 横浜市, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/hozentorikumi/assessment/shinaijigyou/76-mokuji/76\_jigotyousahoukoku.files/76\_jigotyousakekkahoukokusyo\_koujityuu2.pdf](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/hozentorikumi/assessment/shinaijigyou/76-mokuji/76_jigotyousahoukoku.files/76_jigotyousakekkahoukokusyo_koujityuu2.pdf)
2\. 横浜市 旧小柴貯油タンク埋戻しにICT|建設ニュース 入札情報, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.kentsu.co.jp/webnews/html\_top/210806400041.html](https://www.kentsu.co.jp/webnews/html_top/210806400041.html)
3\. 旧小柴貯油施設の跡地利用 横浜市, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/kichi/beigun/atochi-koshiba.html](https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/kichi/beigun/atochi-koshiba.html)
4\. 現地プラント施工実績 | 友弘エコロジー株式会社, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://tomohiro.co.jp/fluidized-soil-construction/construction-results](https://tomohiro.co.jp/fluidized-soil-construction/construction-results)
5\. 小柴貯油施設 \- Wikipedia, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9F%B4%E8%B2%AF%E6%B2%B9%E6%96%BD%E8%A8%AD](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9F%B4%E8%B2%AF%E6%B2%B9%E6%96%BD%E8%A8%AD)
6\. (仮称)小柴貯油施設跡地公園 基本計画 \- 横浜市, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/koen/tsukuru/seibikeikaku/koshiba.files/kihonkeikaku.pdf](https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/koen/tsukuru/seibikeikaku/koshiba.files/kihonkeikaku.pdf)
7\. 1】事前評価 (仮称)小柴貯油施設跡地公園整備事業 (環境創造局) \- 横浜市, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/zaisei/fmsuishin/jigyohyoka/h26/h26-2iinkai.files/0013\_20180718.pdf](https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/zaisei/fmsuishin/jigyohyoka/h26/h26-2iinkai.files/0013_20180718.pdf)
8\. 小柴貯油施設跡地利用基本計画 \- 横浜市, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.city.yokohama.lg.jp/kanazawa/kurashi/machizukuri\_kankyo/machizukuri/beigun/02.files/0081\_20181101.pdf](https://www.city.yokohama.lg.jp/kanazawa/kurashi/machizukuri_kankyo/machizukuri/beigun/02.files/0081_20181101.pdf)
9\. 小柴自然公園 みんなのあそびば | プロジェクト | 株式会社ランズ計画研究所 LAN'S Inc., 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.lans-plan.co.jp/project/2415](https://www.lans-plan.co.jp/project/2415)
10\. 小柴自然公園(神奈川県横浜市) \- アボック社, 1月 5, 2025にアクセス、 [https://www.aboc.co.jp/business/sign/case/mailmag/44.pdf](https://www.aboc.co.jp/business/sign/case/mailmag/44.pdf)