GTD(Getting Things Done)の考え方では、「次にとるべき具体的なアクション(Next Action)」を明確にし、曖昧な“タスク”を排除することで行動をスムーズにするのが重要だとされています。しかし、次にとるべき行動が「判断する」「考える」のように表現されてしまっている場合、いくつか注意すべき点があります。
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## 1. 「判断」「考える」状態の何が問題か
### 1-1. 物理的な行動が不明確
GTDでは、**「実際に何をするのか」** がはっきりわかる行動を「Next Action」と呼びます。たとえば「Aさんに電話をかけてスケジュール確認をする」「資料の◯ページ目を確認して、結論を書き出す」といった具合に、「いつ・どこで・どのような手段で」という具体性が必要です。
ところが、「判断する」「考える」という言葉は**物理的にどう動けばいいのかが曖昧**です。頭の中でのプロセスだけを指しており、次に「どんな動きをとればいいのか」のイメージがつかめません。
### 1-2. 本当のアクションが隠れている
「判断する」「考える」という表現には、実は**何かしら前提となる調査や他者への確認、資料の読み込みなどのプロセス**が隠れている場合があります。
- 例:「仕様変更するか判断する」→ 実は「担当エンジニアに影響範囲をヒアリングする」「顧客に確認して承諾を得る」などの行動が必要
- 例:「新プロジェクトの進め方を考える」→ 実は「過去の類似プロジェクトの資料を読み返す」「チームメンバーに最初のアイデアをヒアリングする」といった下準備が必要
こうした具体的な行動が曖昧なまま「判断」「考える」で止まっていると、実際には何をすればいいのかがわからなくなり、先送りやタスクの山積みに繋がりがちです。
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## 2. なぜ注意が必要なのか
### 2-1. 思考停止と先延ばしを招きやすい
「判断しなきゃ」「考えなきゃ」と頭ではわかっていても、**実際に何から手をつけていいか明確でない**ため、そこで思考がストップしてしまうことがあります。結果として、タスクの先延ばしやモヤモヤ感が増大し、ストレスになることも少なくありません。
### 2-2. モチベーションの低下
曖昧なタスクのままだと、タスクを完了するためのプロセスが具体的にイメージできません。ゴールがぼんやりしていると、やる気やエネルギーも出にくくなります。小さくても「具体的に完了を実感できるアクション」に落とし込めていないと、モチベーションが下がりがちです。
### 2-3. 管理と見通しが困難
GTDのリストに「考える」というタスクだけが並んでいても、実際には**考えるための手順やステップ**が複数必要かもしれません。そうしたステップを無視したままだと、どれだけ時間や労力がかかるのかを見積もりづらく、結果的にスケジュールが崩れる原因になりやすいです。
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## 3. そうなった時にどうするべきか
「判断」「考える」と書き出してしまったときこそ、そこには**「実際の行動は何か?」を洗い出す**チャンスがあります。以下の手順でタスクをよりクリアにしていきます。
### 3-1. 具体的なアクションへブレイクダウンする
1. **疑問点・調査事項を明らかにする**
「判断するために、いったい何を知らなければならないのか?」
「考えるためには、どんな情報や参考資料が必要なのか?」
といった疑問点をリストアップします。
2. **必要な行動に落とし込む**
- 「◯◯さんに確認のメールを送る」
- 「参考資料の◯ページを読み込み、要点をメモする」
- 「A案とB案のメリット・デメリットを書き出す」
- 「部門長に簡単なプレゼンをして承認を得る」
など、**最初に起こすべき実行可能な一歩**を見つけます。
3. **“物理的に実行できる”形で書き直す**
GTDでは「紙に書いたときに、そのまま行動に移れる指示」になっているかどうかが大切です。明確に「○○をする」というレベルまで落とし込んだうえで、自分のToDoリストやGTDのリストに再度登録します。
### 3-2. 一度に大きな結論を出そうとしない
「判断」「考える」というタスクは大きすぎる場合が多いので、**複数ステップに切り分ける**ことが効果的です。一歩目ですべての答えを出そうとするのではなく、「まずは材料を集める」「情報を整理してみる」という形で段階的に前進させます。
### 3-3. 必要ならば「プロジェクト化」する
「判断する・考える」作業が大規模になり、複数の行動ステップが伴う場合は、**ひとつのプロジェクトとして扱う**のも手です。GTDの基本では、「2ステップ以上のアクションが必要なものはプロジェクトとして扱う」とされています。
- 例:「新製品のコンセプトを考える」→「プロジェクト: 新製品コンセプト策定」
- アクション1: 既存の競合製品のリサーチ
- アクション2: 社内チームからアイデアヒアリング
- アクション3: 初期アイデアのまとめとレビュー依頼
- …など、具体的アクションをブレイクダウンして管理する
### 3-4. 定期的にレビューしてアップデートする
ブレイクダウンしたアクションでも、**進めるうちに新たな疑問点が出てくることは珍しくありません**。その際にはまた「考える」「判断する」という表現だけにとどまらないように、具体的なステップへと再分解することが必要です。GTDの週間レビューや日次レビューを活用して、こまめにタスクの内容を更新しましょう。
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## 4. まとめ
- **「判断する」「考える」という曖昧なタスクは要注意**
→ GTDで言う“Next Action”はあくまで実行可能な物理的行動であるべき。
- **曖昧な表現のままだと先延ばしやストレスの原因に**
→ 実際に何をすればいいかわからず、タスクが滞りがちになる。
- **具体的行動へブレイクダウンすることが大切**
→ 「誰に何を確認するのか」「どんな資料を読むのか」「どんな比較表を作るのか」などに分解してリスト化する。
- **大きいタスクはプロジェクトとして扱う**
→ ステップを明確にし、順番に進めることで成果へつなげる。
GTDは「モヤモヤをなくし、行動をスムーズにし、頭をクリアに保つ」ための仕組みです。「判断する」「考える」のように行動が抽象的になっているときこそ、本当にすべき小さなアクションを見つけ直し、ストレスフリーに進めていきましょう。