[原典はこちら](https://centou.jp/docs/the-way-user-research-takes-root)
リサーチやユーザー理解の重要性が認識されているにもかかわらず、多くの組織でその浸透が進まない現状がある。本ノートでは、リサーチの組織浸透を阻む4つの主要な要因と、それらを克服するためのアプローチを解説する。
## 1. 「理解してもらうこと」から始めてしまう誤り
### 理解重視アプローチの問題点
多くの場合、リサーチの重要性を組織に理解してもらおうと、ワークショップや勉強会から始めてしまう。しかし、このアプローチには以下の問題がある:
- 一時的な盛り上がりで終わりやすい
- 既存の組織文化や成功体験を無視している
- 各職種の既存の「やり方」と衝突する
### 結果重視アプローチへの転換
組織浸透を効果的に進めるには、理解を求めるのではなく、具体的な成果を示すことから始めるべきである。
- 特定の事業や職種で、リサーチが「使える」ことを実証する
- インパクトの大きい結果を出すことに注力する
この転換により、リサーチの有用性を実感を伴って示すことができ、組織全体への浸透の足がかりとなる。
## 2. リサーチを主語にしたコミュニケーション
### 主語の誤りがもたらす弊害
リサーチの組織浸透を目指す際、「リサーチをしましょう」というコミュニケーションは効果的ではない。これは以下の理由による:
- 組織のメンバーが求めているのは「リサーチ」そのものではない
- リサーチは手段であり、目的ではない
### 事業・組織を主語にしたコミュニケーションへの転換
効果的な組織浸透のためには、以下のようなアプローチが必要である:
- リサーチのアウトカムを主語にする
- 「事業を伸ばす」「課題を解決する」といった、組織の目的に即した表現を用いる
- 徹底的な事業理解・組織理解に基づいたコミュニケーションを行う
この転換により、リサーチが組織の目的達成に直結する活動として認識されやすくなる。
## 3. 組織のスピードとの不整合
### スピードの遅さがもたらす問題
[[AI時代のデザイン思考は、AIによる大量アイデア生成と人間の判断力の融合により進化する]]が示すように、現代のビジネス環境では迅速な意思決定と行動が求められる。リサーチ活動がこのスピード感に合わないと、以下の問題が生じる:
- リサーチが「スピードを阻害するもの」と認識される
- 必要なタイミングで情報が得られない
- アジャイルな組織の動きに追いつけない
### スピードに適応したリサーチ活動への転換
組織のスピードに合わせたリサーチ活動を実現するには、以下のアプローチが有効である:
- 徹底的な先回り:将来的に必要となる情報を予測し、事前に収集する
- データ基盤の整備:「欲しい時に欲しい情報がある」状態を作り出す
- [[AI時代のコストリーダーシップ戦略]]を参考に、効率的なリサーチプロセスを構築する
この転換により、リサーチ活動が組織の動きを加速させる存在として認識されるようになる。
## 4. リサーチ活動の不透明性
### 不透明性がもたらす信頼の欠如
リサーチ活動やその結果が不透明であると、以下のような問題が生じる:
- 結果の信頼性への疑問
- データの代表性への懸念
- 課題の重要度の判断が困難
これらの問題は、リサーチ結果に基づく意思決定を困難にし、組織浸透を阻害する。
### 透明性の高いリサーチ活動への転換
[[AI時代のZettelkastenはアイデア生成と情報整理の新たな形態を創出する]]の考え方を応用し、以下のようなアプローチでリサーチ活動の透明性を高める:
- プロセスと根拠の可視化:どのようにデータを収集し、分析したかを明確に示す
- 結果の分かりやすい提示:データの視覚化や簡潔な要約を提供する
- 組織全体での共有:リサーチ活動を特定の部署だけでなく、組織全体で共有する仕組みを作る
この転換により、リサーチ結果への信頼性が高まり、意思決定者が安心して活用できるようになる。
## 結論:効果的なリサーチの組織浸透に向けて
リサーチの組織浸透を成功させるためには、以下の4点に注力することが重要である:
1. 理解を求めるのではなく、具体的な結果を示すことから始める
2. リサーチではなく、事業や組織の目的を主語にしたコミュニケーションを行う
3. 組織のスピードに適応した、先回りのリサーチ活動を実践する
4. リサーチ活動の透明性を高め、信頼性を確保する
これらのアプローチを実践することで、リサーチは組織の強力な武器となり、自然にユーザー目線の議論が交わされる文化が醸成される。[[プロダクトデザイン]]や[[プロダクト開発]]において、リサーチの重要性が十分に認識され、効果的に活用される組織へと変革することができるだろう。