万人の闘争状態とは、[[トマス・ホッブズ]]が提唱した政治哲学の概念であり、自然状態における人間の生活を指す。この状態は、中央政権や法の支配が存在しない状況であり、人間は自己保存のために他者と競争し、闘争するとされる。 万人の闘争状態は、政治理論や倫理学における重要な概念であり、国家の正当性、権力の源泉、個人の権利と義務に関する現代の議論にも影響を及ぼしている。 ---- ### 主要な特徴 1. **自由と平等**: 万人の闘争状態では、すべての人が自然権を有し、行動に制限がない。同時に、誰もが他者を殺害する能力を持つため、平等な脅威と見なされる。 2. **信頼の欠如**: 他人を信じる根拠がないため、恒常的な不安と疑念が生じる。 3. **予防的攻撃**: 他人による攻撃を予防するため、先制攻撃が正当化される。 4. **資源の奪い合い**: 限られた資源に対する無限の欲求が衝突し、永続的な競争と争いが発生する。 ---- ### 影響と評価 - **社会契約の必要性**: 万人の闘争状態は非常に危険で不安定なため、人々は秩序と安全を求めて社会契約を結ぶことが合理的であるとされる。この契約により、国家権力が形成され、法と秩序が確立される。 - **批判と反論**: この見解は懐疑的に捉えられることも多く、人間の本性についてより協力的または寛容な解釈を提供する哲学者もいる。また、現代社会における国家の役割や個人の自由とのバランスについて、様々な議論が存在する。