感情的葛藤の理解と受容
実務から離れることへの悔しさや寂しさ、不安や焦りは自然な感情である。特にデザイナーはエンジニアでいうコードを書く代わりにスケッチを書くという直接的な創造活動に価値を見出してきた者にとって、この移行は大きな心理的課題となる。30代後半はキャリアや人生の大きな節目であり、アイデンティティを再編成することが重要であるという観点からも、この感情的な揺らぎは重要な転換点として捉えることができる。
実務者としてのアイデンティティ
デザイナーのアウトプット重視の理由から理解できるように、直接的な制作活動は自己のアイデンティティと深く結びついている。クリエイティブは一人で作った方が細かいところまで調整するコストが下がるため、クオリティが上がるという経験則を持つデザイナーにとって、制作を手放すことへの抵抗感は当然のものだ。
視点の転換:事業成功への貢献
しかし、デザイナーの役割は進化し続けている。事業規模に応じたデザイン組織の最適解と役割を考えた時、「できる人に任せる」という判断は、むしろ組織や事業に大きく貢献する重要な選択となる。
新たな価値創造の形
1. ディレクションによる価値創出
AI時代のアートディレクションにおいて重要なのは、全体的なビジョンとコンセプトの設定だ。デザインという概念における設計や計画を通じて、他のデザイナーの才能を最大限に引き出すことが可能となる。
2. 戦略的視点の活用
デザインによるビジネス競争力の強化は企業の成功に不可欠であるという認識のもと、より大局的な視点から事業の成長に貢献できる。ビジネスとユーザー体験の接続方法:グロースサイクル実践編を意識した戦略立案が可能となる。
3. 専門知識を活かした評価とフィードバック
建設的なフィードバックを行うためのコツを活用し、クリエイティブな職種では個別の状況に応じた評価が必要であるという特性を理解した上で、的確な評価とフィードバックを提供できる。
4. リーダーシップの発揮
チームの生産性におけるリーダーシップの役割を理解し、成功するチームには、高い技術を持つ選手だけでなく、強いメンタリティを持つ選手が必要で、そのバランスが取れていることが求められるという視点から、チーム全体の成長を促進できる。
5. 新領域への挑戦
デジタルプロダクトデザイナーの将来性と多様性への適応を意識しながら、これまで取り組めなかった新しい課題や事業の側面に挑戦することで、自身の価値をさらに高めることができる。
結論
「自分が手を動かさない=価値がない」という思い込みから解放され、デジタル時代におけるデザイナーのキャリア形成において新たな価値創造の形を見出すことが重要だ。この移行期の感情的な揺らぎを受け入れつつ、探究型キャリアステージモデルは長期的な自己実現と社会貢献のための効果的な指針であるという視点から、自身の役割を再定義していくことが、デザイナーとしての次なるステージへの扉を開く。