制作プロセスの根本的な転換

従来の制作プロセスは、具体的な要件から始まり、段階的に形にしていく線形的なアプローチが主流だった。しかし、AIとの共創は人間単独のアウトプットを超える価値を生み出す現代において、抽象から始める循環的なアプローチがより効果的な創造を可能にする。このプロセスは、デザインプロセスは非線形であるという本質を踏まえ、意図的に曖昧さと余白を活用することで、創造の可能性を最大化する。

発散:世界の輪郭を広げる段階

発散の段階では、まだ何も決めない。思考の可視化における本質追求の原則とプロセスは、表層的理解を避けながら創造的発見を促進することを意識しながら、可能性の地形を探索する。この段階でのAIの活用は、人間単独では到達しにくい視点や関連性を発見するための触媒として機能する。重要なのは、アイデアを出すことそのものが目的ではなく、どんな方向性があり得るのかを把握することにある。

AIを活用した1人思考蒸留プロセスは知識体系の構築と創造的思考を革新的に促進するため、発散段階では積極的にAIと対話し、思考の幅を広げる。しかし、この段階で選ばない、絞らない、決めないという原則を守ることが、後の創造的飛躍を可能にする。効果的な探索には全方位的探索から仮説検証型探索への段階的移行が不可欠であるという理解のもと、まずは制約を設けずに探索範囲を最大化する。

収束:重心を見つける段階

発散した要素から、重心になりそうな視点・言葉・態度を静かに拾い上げる収束段階は、抽象化とは、情報の圧縮であるという原理を活用する。ここでは、散らばった可能性の中から本質的な要素を抽出し、それらを基準の原型として位置づける。しかし、この基準はまだ固めすぎてはいけない。方向を指すコンパスのような、柔軟性を持った指針として扱うことが重要である。

GTDのコンテキスト概念を活用したインプットとアウトプットの分離は創造的プロセスを効率化するという考え方に基づき、収束段階では収集した情報から、制作の方向性を示す核心的な要素を抽出する。この段階での判断は、抽象化は効率的な判断と行動を可能にするという原則に従い、詳細にこだわらず大きな方向性を定めることに集中する。

抽象的な土台の構築

抽象的な土台を構築する際、最も重要なのは基準をあえて柔らかいまま保つことである。具体の世界は量を重視し、抽象の世界はシンプルであるほど価値が高まるという原理が示すように、過度に具体化された基準は創造性を制限する。余白がないと創造は窒息してしまう。曖昧さは欠点ではなく、後のクリエイティブを呼吸させるための空間として積極的に活用すべき要素である。

この段階では、抽象度の高い仕事は明確化と構造化によって効果的に進められるという一見矛盾する原則を、創造的に解釈する必要がある。明確化と構造化は、固定化ではなく、創造の自由度を保ちながら方向性を示すフレームワークとして機能させる。デザイン思考の本質は設計とは対照的な創造的行為であり、手を動かすことから生まれる発見的プロセスであるという理解のもと、抽象的な土台は発見を促進する装置として設計される。

具象化:抽象を地上に降ろす

抽象が十分に育った段階で、初めて具体的なツールを開く。作りながら考えるプロセスが思考を明確化し、創造的な問題解決を促進するという原則に従い、手を動かしながら抽象を形にしていく。方向性が明確になっているため、制作のスピードは自然に上がる。これは迷いを解消するためではなく、見えてきた抽象を地上に降ろすための必然的な動きである。

デザインの本質はセンスを形に変換する反復的な試行錯誤のプロセスであることを理解し、具象化の段階では素早い実験と検証を繰り返す。AIはパターンマッチングで可能性を生成し、人間はコンテキストから意味を創造し削り出すという分担により、AIを活用しながらも人間の判断と感性を中心に据えた制作を進める。

循環:終わりのないプロセス

発散と収束を一度きりで終わらせず、周期として扱うことが、このアプローチの核心である。クリエイティブな仕事は最低5回の反復サイクルを経ることで質が向上するという経験則が示すように、循環的なプロセスこそが質の高い成果物を生み出す。発散→収束→抽象の調整→具象化という往復そのものが制作のリズムとなり、AI時代のクリエイティブワークフローは反復的かつ探索的なアプローチへと変化しているという時代の要請にも応える。

ダブルダイアモンドプロセスは全ての仕事に適用可能な普遍的なアプローチであるという理解を拡張し、このプロセスを多重的に適用することで、より深い創造性を引き出す。各サイクルで得られた学びは次のサイクルの起点となり、螺旋状に上昇していく創造的成長を実現する。

AI時代における抽象的アプローチの意義

このような抽象を土台にした制作順序は、AI時代において特に重要性を増している。AI時代において人間には高次の思考と判断力が不可欠となり、これらのスキルが競争力の源泉となるという認識のもと、抽象的思考と具体的実装を往復する能力こそが、人間の創造性の核心となる。AIは発散の幅と収束の言語化を広げる補助として機能し、人間は抽象と具象の間を自在に行き来することで、AIだけでは到達できない創造的価値を生み出していく。

結局のところ、抽象を土台にする制作の順序は、確実性よりも可能性を、完成よりもプロセスを、答えよりも問いを重視する態度である。この循環的なアプローチを通じて、私たちは予測不可能な創造的飛躍を可能にし、真に革新的な成果物を生み出すことができるのである。