### 遺伝子中心の生物観
進化生物学者リチャード・ドーキンスは、生物の主体を遺伝子と定義し、その最大の目的は遺伝子を後世に残すことであると唱えた。彼の著書『利己的な遺伝子』では、生物を「遺伝子の乗り物」と表現し、遺伝子の利益を最優先する観点から生物の行動や進化を説明する。
### 包括適応と利他的行動
包括適応の概念は、個体が自己の遺伝子を直接後世に残すだけでなく、親族など遺伝子を共有する血族の生存と繁栄に貢献することで、間接的に自己の遺伝子の存続を図る戦略を指す。これにより、血族間での利他的な行動が生物にとって合理的な選択となる場合がある。
### 血縁淘汰と社会行動
血縁淘汰は、血族内での利他的行動が選択されるプロセスを説明する。血族間での協力や自己犠牲的な行動は、遺伝子の観点から見れば、血族全体の生存率を高めることに貢献し、結果として自己の遺伝子を間接的に守ることにつながる。一方で、血族ではない個体に対しては、同様の協力や犠牲を払う動機が低く、これが血縁淘汰による淘汰プロセスを生み出す。
### 結論
リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』に見られるような、遺伝子中心の視点は、生物の社会行動や進化を理解する上で重要な洞察を提供する。包括適応と血縁淘汰の概念は、遺伝子の視点から生物の利他的行動や社会構造の背後にある合理性を説明し、生物学における深い理解を可能にする。
[[📖リーダーシップ進化論]] P59