P94 「ビジネスは戦争だ。労組の諸君の要求を丸呑みすればうちは世界のライバル社に負ける。いまの水準の給料はとうてい払えない。おれたち幹部は寝ても覚めても経営のことを死に物狂いで考え、汗水を垂らして行動し、トヨトミを発展させなくてはならない。牙を剥いて襲いかかる他メーカーを蹴散らし、トヨトミはもちろん、子会社、サプライヤーの社員とその家族の生活を守らねばならんのだ。戦争は負けたら終わりだ。なにも残らない。焼け野原だけだ。」 --- <今回の危機を乗り切ったところで、トヨトミ自動車はあと二十年もちません) 武骨な風体に似合わない流麗な文字が、恐ろしいことを綴っていた。 <認めたくはないのですが、世界の政治、経済、軍事を牛耳るのは欧米です。今日のさまざまな政治状況、地政学上の諸条件を勘案するに、トヨトミ自動車が世界の覇権を握る真の権力者たちの好餌となるのは時間の問題です。主要先進国が主導する環境問題対策で狙い撃ちされ、業績が雪崩を打って悪化し、いっきに崩壊に追い込まれるか、それとも欧米の自動車メーカーに買収されるか、あるいは巨大IT企業の傘下となるか・・・・・・。日本国に守ってもらおうにも、もはや昔日の国力はありません。現状のままではトヨトミ自動車に未来はない、と覚悟していただきたい。これは必然です。だれも逃れられない歴史の冷なジャッジです。あなたが嘆く必要はありません> --- P494 「ビジネスは戦争なんだ。そして社長は最高指揮官だ。食うか食われるかだ。アメリカ政府が本気で攻撃に出たら日本のメーカーなどひとたまりもない。手前味噌だが、おれはアメリカの怖さがわかっていたからニユーヨーク、ワシントン、ロサンゼルスに凄腕のロビイストを配置して可能な限りの対米戦略を講じてきた。米国政財界の重鎮を取り込み、大統領の地元に工場とサプライヤーのセットで進出した。ロビイストたちの根回し、懐柔が効いたからこそ、いくら儲けようがどこからも文句は出なかった。これは一朝一夕でどうなるものでもない」