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従来のワークフローとAI時代の変化

従来のクリエイティブ制作フローは、発注主からクリエイティブエージェンシーへの一方向的かつ線形的なプロセスが主流であった。このプロセスでは、オリエンテーションやブリーフの整理から始まり、数週間後にコンセプトやアイデアが提案され、フィードバック、ラフ制作、本制作、検証という長いサイクルを経る必要があった。これは時間とコストを多く消費する非効率的なプロセスとなっていた。

それに対して、AI時代のワークフローは本質的に異なる特性を持つ。AIと人間の協働:実行はAI、課題設定は人間の役割に見られるように、AIと人間の役割分担が変化している。AIとの共創は人間単独のアウトプットを超える価値を生み出すという視点から、AIを単なる「ツール」としてではなく「パートナー」として位置づける視点へのシフトが起きている。

AIを活用した反復的・探索的アプローチ

AI時代のワークフローの特徴は、その反復性と探索性にある。AIを用いたプロトタイプの迅速な作成とイテレーションによって、アイデア出しから市場調査、ビジュアル制作、検証までを一気通貫で進めることが可能になっている。このアプローチは、AI時代を乗り切るために必要なスキルセットとしても重要な視点である。

例えば、マーケティングキャンペーンの企画において、複数のAIツールを組み合わせることで、従来であれば数週間かかっていたプロセスを数時間で完了させることも可能になる。これはAIを活用することで、アイデアの具現化と仕事の効率化が飛躍的に向上するという考え方に基づいている。

事業会社内部での活用とメリット

AI活用の重要な側面として、事業会社内部でもプロトタイプの作成と検証が可能になることが挙げられる。AI時代のデザイン思考は、AIによる大量アイデア生成と人間の判断力の融合により進化するという観点から、社内でAIを活用したプロトタイピングを行うことで、意思統一がクリアな状態で外部へ発注することが可能になる。

このアプローチには以下のようなメリットがある:

  1. 意思決定の迅速化: AI時代のコストリーダーシップ戦略を実現できる。プロトタイプを早期に作成し検証することで、方向性の合意形成が早くなる。

  2. コスト削減: 全体の人件費を削減しながらも高品質なアウトプットを目指すことが可能になる。これはAIを活用したアウトプットは人間の仕上げを前提とした編集可能なフォーマットにすべきであるという原則とも合致する。

  3. 品質向上: AI時代のクリエイティブワークでは目的の共有と人間の判断力が成功の鍵となるように、AIの生成力と人間の判断力を組み合わせることで、より質の高いアウトプットが期待できる。

実践例:AIツールを組み合わせた短時間での製品開発

ヒューイットソン氏のセッションでは、ChatGPT、Perplexity、Midjourney、Runwayなどの複数のAIツールを駆使して、ひとつの製品開発プロセスを45分という短時間で実演した。このプロセスはマーケティングコミュニケーションの開発にも応用可能である。

具体的なワークフローとしては:

  1. アイデア発想: プロンプト研究を活用したChatGPTなどのLLMによるアイデア生成

  2. 市場調査: Perplexityなどの検索強化型AIによる情報収集

  3. ビジュアル制作: Midjourneyの便利なテクニックを活用した画像生成や、Stable Diffusionの使い方完全ガイドを参考にした映像制作

  4. プロトタイプ作成: AIで生成した素材を組み合わせた製品やサービスのプロトタイピング

  5. 検証と改善: AIによるフィードバックの分析と改善案の提案

このようなAI時代の事業構想スキームは具体と抽象を行き来することで効果的なビジネス創出を可能にするアプローチは、従来のクリエイティブプロセスを根本から変革する可能性を秘めている。

AIとの共創によるクリエイティブワークフローの未来

AIとの共創によるクリエイティブワークフローは、今後さらに発展していくと考えられる。AI時代のアートディレクションにおいては、AIの生成能力を最大限に活かしつつ、人間の創造性や判断力を組み合わせた新しいワークスタイルが求められるだろう。

特に重要なのは、AI時代の仕事の本質はAI出力のディレクション力にあり、人間には創造性と批判的思考が不可欠となるという観点だ。AIが生成するアウトプットをどのように方向づけ、選別し、組み合わせるかという「AIディレクション」のスキルが、クリエイティブプロフェッショナルにとって不可欠となる。

また、AI時代における人間の判断力より試行錯誤の速度が成功を左右するという視点から、迅速な試行錯誤とフィードバックのサイクルを回す能力が競争優位の源泉となるだろう。デジタルプロダクトデザイナーの将来性と多様性への適応を考えるうえでも、このような新しいワークフローへの適応は必須といえる。

結論

AI時代のクリエイティブワークフローは、反復的かつ探索的なアプローチへと変化している。AIをパートナーとして位置づけ、複数のツールを組み合わせることで、アイデア出しから検証までのプロセスを劇的に効率化することが可能になる。事業会社内部でもプロトタイピングが可能になることで、外部への発注においても意思統一がクリアな状態で進めることができ、コスト削減と品質向上の両立が期待できる。

このような変化に対応するためには、プロジェクトの成功は目的達成への集中と実行に専念することで実現されるという原則を守りつつ、AIと人間それぞれの強みを活かした新しいワークフローを確立していくことが重要である。AIは仕事の本質を変え、人間の創造性と判断力をより重要にするという認識のもと、AI時代にふさわしいクリエイティブプロセスの再構築が求められている。