📖人材マネジメント入門 P10
HRMの定義と起源
Human Resource Management(HRM)は、アメリカで発祥した人材マネジメントの概念である。日本語では「人的資源管理」と訳される。人材マネジメントという用語はHRMの日本語訳であり、両者は本質的に同じ概念を指す。
HRMの起源は1950年代後半から1960年代にかけてのアメリカにある。この時期、アメリカは日米貿易摩擦などの影響で経済力の低下に直面していた。この危機感が、従来の労務管理(Personnel Management)から新しい人材マネジメント手法への移行を促した。
HRMと従来の労務管理の違い
HRMと従来の労務管理(Personnel Management)には重要な違いがある:
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人材の捉え方:
- 従来:代替可能な「コスト」
- HRM:投資対象の「資源」
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管理の焦点:
- 従来:日々の業務管理や労使関係
- HRM:戦略的な人材育成と活用
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目的:
- 従来:労働力の効率的な活用
- HRM:組織の競争力向上と従業員の成長の両立
この変化は、「Human」(人)を「Resource」(投資する対象)として「Management」(マネジメント)するという考え方に反映されている。
HRMの主要な機能
HRMは以下のような機能を包括的に扱う:
- 採用・選抜:組織に適した人材の獲得
- 教育訓練:従業員のスキル向上と能力開発
- 評価・報酬:公正な評価システムと適切な報酬設計
- キャリア開発:従業員の長期的成長支援
- 労使関係管理:健全な労使関係の構築
- 組織開発:組織の効率性と生産性の向上
これらの機能は相互に関連し、組織全体の戦略と連携して実施される。
HRMの重要性
HRMが重要視される理由には以下がある:
- 競争優位の源泉:優秀な人材の獲得・育成・維持が組織の競争力を左右する。
- 組織文化の形成:HRMは従業員の行動や価値観に影響を与え、組織文化を形成する。
- 法的コンプライアンス:労働法規の遵守と従業員の権利保護を確保する。
- 変化への適応:急速に変化する経営環境に組織が適応するための人材戦略を立案・実行する。
日本におけるHRMの導入と課題
日本では1980年代後半から1990年代にかけてHRMの概念が導入された。しかし、日本的経営の特徴である終身雇用や年功序列との整合性が課題となった。日本の産業構造と競争力:専門性の過剰適用がイノベーションを阻害しているという指摘もあり、グローバル競争の中で日本企業はHRMの導入と自社の文化との調和に苦心している。
HRMの今後の展望
- テクノロジーの活用:AI・ビッグデータを用いた人材分析や意思決定支援
- ダイバーシティ&インクルージョン:多様な人材の活用と包括的な職場環境の創出
- AI時代に取り残されないためには、継続的学習と適応力が不可欠である:AIと人間の協働を前提とした人材育成
- サステナビリティ:ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した人材戦略の立案
HRMは単なる人事部門の機能ではなく、組織の戦略的パートナーとしての役割を担っている。経営戦略と人材戦略の融合が、今後の組織の成功を左右する重要な要素となるだろう。