なんとなく伸ばすのではない
グロースを考える際、「なんとなく良さそうだから伸ばす」「数字だけを追って判断する」という姿勢では、持続的な成長は難しい。目指すべきは、自分たちの言葉で説明できる仮説を持った上で、次の検証に進める状態である。
「なんとなく良さそう」という判断の問題は、振り返りができないことにある。施策がうまくいったとしても、なぜうまくいったのかが分からなければ、再現性がない。施策が失敗したとしても、なぜ失敗したのかが分からなければ、学びがない。どちらにせよ、次の施策の精度は上がらない。
数字だけを追う判断の問題は、因果関係の見落としである。DAUが増えたとして、それは最近実施した施策の効果なのか、季節要因なのか、競合の失敗によるものなのか。数字だけを見ていては判断できない。数字の裏にあるメカニズムを理解していなければ、数字の上昇を持続させることも、数字の下落を防ぐこともできない。
断言できなくても問いがあればよい
課金につながるかはまだ断言できないかもしれない。しかし、「ハマっているユーザーが増えている理由」を説明できる状態にはなっている。あとは、それが売上に結びつくかを検証すればよい。これが健全なグロースの進め方である。
ここで重要なのは、「説明できる」のレベルである。「なんとなくこうだと思う」ではなく、「◯◯という仮説に基づいて施策を打った結果、△△という指標が□□%動いた。これは仮説を支持/棄却する証拠である」という形で説明できることが求められる。この説明ができれば、次のステップが明確になる。仮説が支持されたなら、その方向で施策を強化する。棄却されたなら、仮説を修正して再検証する。
仮説検証において、仮説が「正しい」ことを検証するのではなく、仮説が「間違っている」ことを検証することが重要であるという原則に従えば、仮説を持っていること自体に価値がある。仮説がなければ、棄却することも支持することもできない。検証とは、仮説を持った上でデータと向き合うプロセスである。仮説なしにデータを眺めても、見えるものは限られる。
検証できる問いの条件
「検証できる問い」には条件がある。まず、反証可能であること。「このプロダクトは良い」という主張は、反証可能ではない。何をもって「良い」とするのか、どのような結果が出れば「良くない」と判断するのかが不明確だからである。一方、「◯◯機能を追加すれば、7日以内リテンション率が5%向上する」という主張は反証可能である。実際に機能を追加して、リテンション率を計測すれば、仮説が正しいかどうか判断できる。
次に、実行可能であること。「もしユーザー数が100万人いれば、収益化できる」という仮説は、ユーザー数を100万人にする方法が不明であれば検証できない。検証できる問いは、現在のリソースと時間の中で実際に検証できるものでなければならない。
さらに、意味があること。検証可能で実行可能であっても、その結果が意思決定に影響しないなら意味がない。「ボタンの色を青から緑に変えると、クリック率が0.1%上がる」という仮説は検証可能かもしれないが、その結果が事業に与える影響が小さければ、検証する価値は低い。限られたリソースは、意味のある問いに集中すべきである。
仮説を立てる力が問われる
仮説を立てるには想像力と直感が必要であるように、良い問いを立てるためには、データだけでなく、プロダクトへの深い理解と洞察が求められる。データは過去の記録であり、未来を直接教えてくれるわけではない。データを見て「こうなるのではないか」という仮説を立てるのは、人間の想像力である。
良い仮説を立てるためには、ユーザーへの共感が必要である。ユーザーがなぜこのプロダクトを使うのか、どのような文脈で使うのか、何に困っているのかを深く理解していなければ、的を射た仮説は立てられない。この理解は、データ分析だけでは得られない。ユーザーと直接話す、自分でプロダクトを使い込む、ユーザーの行動を観察するといった定性的なアプローチが必要である。
また、良い仮説を立てるためには、業界や市場への理解も必要である。競合が何をしているのか、市場のトレンドはどうなっているのか、技術的に何が可能になりつつあるのかを把握していなければ、機会を見逃す可能性がある。効果的な探索には全方位的探索から仮説検証型探索への段階的移行が不可欠であるという視点も参考になる。
グロースのゴールの再定義
PMFを達成したかどうかも、明確な問いを持っていなければ判断できない。「PMFを達成した」と言うためには、「何をもってPMFとするか」という定義が先になければならない。その定義は、検証できる問いの形で記述されるべきである。
グロースのゴールは、成長そのものではなく、「検証できる問いが立っている状態」である。その問いに答えを出す過程で、成長は自然についてくる。問いがない状態で施策を打ち続けても、運が良ければ成長するかもしれないが、運が悪ければ停滞する。どちらにせよ、なぜそうなったのかが分からないため、再現性がない。
検証できる問いを持つことは、チームに安心感をもたらす。「この施策が正解かどうか分からない」という不安は、実はよくある。しかし、「この施策は◯◯という仮説を検証するためのものであり、結果によって次のアクションが決まる」と理解していれば、不安は軽減される。正解かどうかは事後的にしか分からないが、検証のプロセスにいることは確実だからである。
問いを立て続ける文化
検証できる問いを持つことの価値を理解したら、次は「問いを立て続ける文化」を作ることである。一度良い問いを立てて検証したとしても、市場は変化し、ユーザーのニーズも変化する。昨日正しかった仮説が、今日も正しいとは限らない。
問いを立て続けるためには、「分かっていないこと」に対する謙虚さが必要である。判断の正誤よりも行動による検証と改善が重要であるという視点で、常に学び続ける姿勢を持つ。成功体験に固執せず、新しい問いを立て、新しい検証を行う。このサイクルを回し続けることが、持続的なグロースを実現する唯一の方法である。