自分の意思では止められない変化があるとき、その変化が進んだ先で生きていく条件から、現在の準備を考える。変化を引き起こす仕組みを理解し、今のやり方が通用しなくなる部分と、新しく可能になることを見定める。生き残るための備えと、変化を乗りこなすための準備は、同じ見通しから生まれる。先を読む意味は、必要になる能力や関係、余力を、時間のあるうちに育てられることにある。
自然の摂理のようなものを前提に置く
「自然の摂理のようなもの」とは、自分の願望とは独立して働き、行動の条件を定める力を指す。ある条件がそろえば、その結果が生じる。そこに個人の努力や好みを持ち込んでも、結果を生む仕組みそのものには届かないことがある。自分が望む将来を考える際にも、こうした条件を含めて考える必要がある。
この捉え方を社会や仕事に用いるなら、何が変化を進めているのかを具体的に説明する。たとえば、ある作業を同じ品質で、より少ない負担で実行できる方法が広く使えるようになると仮定する。その方法を選ぶ人が増えれば、従来の作業にかけていた時間や費用を見直す動きが生じうる。準備を考える際には、方法の性能、利用する負担、選ぶ人の動機を調べ、どの条件がそろうと自分の仕事に影響するかを整理する。
将来予測と対処を因果関係の理解から考えるノートでは、変化を生む原因と過去の結果を学ぶことを重視している。この考え方を準備に用いると、ある変化が進む理由と、その理由が働く範囲を説明できるようになる。
社会の動きを自然法則と同じ確実さで扱うことには限界がある。制度や人々の選択によって方向が変わる場合もあり、一人では止めにくいことと、誰にも変更できないことには違いがある。「抗えない」と判断する際には、自分が行動する期間と、影響を及ぼせる範囲を含めて考える。
変化した後の生活や仕事から準備を考える
ある変化を前提にすると、今の生活や仕事のどこが維持できなくなるかを検討できる。現在の役割、能力、人間関係、活動の場所を、その変化が進んだ状況に置いてみる。必要とされるものが減る部分もあれば、別の形で使える部分もある。準備の対象は、その違いから具体化する。
新しい方法によって作業の負担が減るという仮定なら、自分の貢献のうち、作業時間の多さに依存していた部分を切り分けられる。目的を決めること、相手の状況を理解すること、結果の良し悪しを判断することまで同じように不要になるとは限らない。どこまで新しい方法に任せられるかを試し、自分が担う必要のある判断と、身につけるべき能力を具体的にする。
コントロール可能な要素に焦点を当てた現実的な計画立案が重要では、自分やチームが直接働きかけられる要因を計画の対象にしている。外部の変化を把握したうえで、学ぶ内容、試す方法、時間の使い方、協力を求める相手を選ぶ。変化への対応は、こうした自分が実行できる行為として記述できる。
生き残るための備えと乗りこなすための準備
生き残るための備えは、環境が変わっても活動を維持できる状態を作ることである。一つの方法や役割が通用しなくなっても、別の方法を試せる余地を残す。新しいやり方を習得する時間を確保し、現在の活動をすべて中断せずに移行できるようにすることも、この備えに含まれる。
乗りこなすための準備は、その変化によって可能になる活動を先に試すことである。作業の負担が減るなら、以前は時間が足りずに試せなかった案を比較したり、扱える仕事の範囲を広げたりできるかもしれない。自分が実現したいことに新しい方法を用い、どの条件なら役立つかを経験として蓄える。
両者には配分の問題がある。現状を維持するために時間を使い切れば、新しい方法を試す機会がなくなる。新しい可能性にすべてを投入すれば、試行が失敗した際に活動を維持しにくくなる。守る必要のあるものと、失敗してもやり直せる範囲を決めることで、準備に使える時間や労力が具体的になる。
過去の成功体験への過剰適応が組織の失敗を招くで扱うのは、以前に成功した手法を、条件が異なる場面でも使い続けてしまう問題である。これを個人の準備に当てはめるなら、これまでの経験のうち、特定の環境に依存していた部分を調べる必要がある。新しい方法でも生かせる経験と、習得し直す必要のある手順を分ければ、準備する範囲を絞れる。
準備に時間がかかるものほど早く始める
変化が起きる時期と、対応できる状態になるまでの時間は、それぞれ見積もる必要がある。必要性が誰にでも分かる段階まで待った場合、学習や試行に使える時間が足りなくなる可能性がある。先を読むことで得られるのは、対応に必要な時間を先に確保する機会である。
知識を得ることと、それを使って判断できることにも時間の差がある。新しい方法の説明を読んでも、実際の仕事に使えば、向かない条件や自分に不足する知識が判明する。一度試しただけでは分からない点もあり、異なる条件で使い、結果を比較する経験が必要になる。協力関係も、相手を知っているだけの状態から、一緒に仕事ができる状態になるまでにはやり取りが要る。
優先する準備は、変化による影響の大きさに加え、習得や移行に必要な時間から考えられる。必要になった時点で短期間に用意できるものは、その時点で判断する余地がある。経験の蓄積が必要なものは、日常の活動の一部で試し始める方が、後からまとめて準備する負担を減らせる。
準備の結果も具体的に記述する。「変化について詳しくなった」にとどめず、一つの仕事で使えた、従来の方法との違いを説明できた、困った際に相談できる相手ができた、といった状態を確認する。理解した内容と実行できることを照合すると、次に必要な経験が分かる。
見通しを修正できる形で準備を進める
変化の方向に確信があっても、その速度、広がる範囲、自分への影響には未確定な部分が残る。準備を進める際には、それぞれを分けて記録する。方向は想定どおりでも普及が遅い場合と、想定した用途で役に立たない場合では、準備の修正内容が異なる。
想像や理想は仮説の原料であり、結論ではなく出発点として扱うでは、想像した内容を観察や実験で検証できる仮説にすることを扱っている。将来の見通しにも、想定が進んでいると判断する材料と、見直す必要があると判断する材料を持たせられる。試した結果、従来の方法より負担が増えたなら、何が原因かを調べ、用途や準備の優先順位を修正する。
不確実な状況を乗り切るために必要な二つの特性では、状況を理解する知性と、行動を選ぶ決断力を組み合わせている。準備においても、判断材料を集めながら、現在の情報で実行できる範囲を決める必要がある。
たとえば、慣れた方法で行っている小さな仕事を一つ選び、新しい方法でも実施して、結果と負担を比較する。その経験は、想定した変化が早く進めば次の仕事に使え、進み方が異なれば見通しを修正する材料になる。試行後にも別の方法を選べる時間と余力が残っていることを、準備の範囲を決める条件に含める。