2026-02-18

二種類の仕事

あらゆる仕事は、突き詰めると二種類に分かれる。一つは「この仕事が何なのか、ゴールは何なのかを明らかにする仕事」。もう一つは「明らかになったゴールに向かって進める仕事」である。多くの人はこの二つを区別せず、混ぜたまま走ろうとする。その結果、ゴールが見えないまま手を動かすか、明確にすることに時間をかけすぎて実行が追いつかない、という事態に陥る。

この二つは、求められるスキルもプロセスも成果物もまったく異なる。にもかかわらず「仕事」という一語で一括りにされてしまうために、どちらのモードで動いているのかを自覚しないまま進んでしまうことが多い。仕事は「プロジェクト」「ワーク」「タスク」で捉えるという整理があるが、それとは別の軸として、今やっている仕事がどちらの種類なのかを常に意識することが、仕事の質とスピードを根本的に変える。

明らかにする仕事

「明らかにする仕事」とは、まだゴールが固まっていない段階で、何を目指すべきかを定義し、決裁者や関係者の合意を得るまでの一連のプロセスである。ここでのゴールは「成果物を作ること」ではなく、決裁する人に納得してもらうことである。

そのためにやることは、コンテキストを集め、整理し、ストーリーとして組み立て、説得力のある形にまとめることである。仕事の本質はコンテキストを調理することにあるという言葉がまさにこのフェーズを指している。生の情報や断片的な事実をそのまま並べても、人は動かない。それらを咀嚼し、論理的な流れに構成し、相手が「なるほど、それなら進めよう」と思える形に仕上げることが、この仕事の本体である。

イシューの見極めが問題解決と価値創造の出発点となるのであり、イシューの設定自体がこのフェーズの中核的作業である。何が本当の課題なのかを特定し、なぜ今それに取り組むべきなのかを言語化する。📖イシューからはじめよが説くように、イシュー度の高い問いを立てられるかどうかが、後続の全ての仕事の価値を規定する。

このフェーズの成果物は、多くの場合「資料」や「提案書」になる。効果的な資料作成は課題と仮説の整理から始まり、明確なストーリー構築で完成する。ただし、資料は手段であって目的ではない。目的はあくまで決裁者の意思決定を引き出すことである。決済者の信頼は深い検討の積み重ねで得られるのであり、表面的に整った資料よりも、深く考え抜いた形跡が信頼につながる。

プロジェクトには「仮説立案・合意フェーズ」と「仮説検証・評価フェーズ」があり、仮説立案が最も労力がかかるとあるように、この「明らかにする仕事」は実はプロジェクト全体で最も労力がかかるフェーズである。しかしここを雑にすると、後の「進める仕事」で大きな手戻りが発生する。

進める仕事

ゴールが明確になり、合意が得られた後は、「進める仕事」に切り替わる。ここからはナチュラルプランニングモデルは人間の自然な思考プロセスを活用した効果的なプロジェクト計画手法であるが威力を発揮する。

ナチュラルプランニングモデルの流れは、目的と価値観の確認 → 成功のイメージ → ブレインストーミング → 整理 → ネクストアクションの特定である。「明らかにする仕事」が完了していれば、目的と成功イメージはすでに手元にある。そこからブレストで作り物や段取りのアイデアを出し、整理してスケジュールと役割と仕組みを固め、一歩ずつ前に進めていく。

プロジェクトの進め方の基本は目的の明確化、行動計画の策定、スケジュール管理の3要素で構成される。このフェーズでは、成果物(何を作るか)、段取り(どの順番で進めるか)、スケジュール(いつまでに完了するか)、座組み(誰がどの役割を担うか)を具体的に定義し、実行に移す。誰かに頼むことを前提に考えると、タスク分解はうまくいくという知見はここで活きてくる。

「進める仕事」の特徴は、ゴールが見えているぶん、進捗を計測しやすいことである。マイルストーンを置き、定期的に振り返り、軌道修正する。まず初めにアウトプットの見通しをつけることで、各作業の完了基準が明確になり、チーム全体が同じ方向を向いて動ける。

二つの仕事を混ぜない

最も危険なのは、この二つを混ぜて同時にやろうとすることである。「とりあえず作りながら考えよう」が機能するのは、個人のクリエイティブワークに限定される。チームでの仕事や組織的なプロジェクトでは、「何を目指すか」が合意されないまま手を動かすと、メンバーごとに向かう先がバラバラになり、後からの手戻りコストが膨大になる。

抽象度の高い仕事は明確化と構造化によって効果的に進められる。特にマネジメントや戦略に関わる仕事は抽象度が高く、「明らかにする仕事」の比重が大きい。逆に、オペレーション寄りの仕事は「進める仕事」の比重が大きい。自分の仕事の中で今どちらのモードにいるのかを意識するだけで、取るべきアプローチが変わる。

「明らかにする仕事」をしているときは、完璧な資料を作ることではなく、本質的な問いを立てることに集中する。「進める仕事」をしているときは、迷わずに実行することに集中する。この切り替えの意識が、ギャップ解決中心の仕事テンプレート:効果的な問題解決と価値創造のためのガイドを実践するうえでの最も重要な前提条件となる。